プロフィール
ひなびや
ひなびや
固定種、自家採種の野菜の販売をしています。
京都の農業法人に5年勤め(夫)、2010年より新城にて夫婦ふたりの自営農業を始めました。
在来種や日本各地の伝統野菜を含めた固定種を、できるだけ自家採種をし、農薬、化成肥料は使わず、少量多品目でいろいろ作っています。
有機肥料を含めた肥料分にもあまり頼らず、ゆっくり時間をかけて栽培しています。
Eメール:info@hinabiya.com
QRコード
QRCODE
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 9人

2014年08月22日

タイガーリーピングジョージ

昨晩、作業を終えて家路に着いた途端、
頭が痛く、関節に悪寒が走り、熱っぽくなってしまった。
間違いなく熱中症になってしまったらしい。
風呂を浴び、晩御飯を食べてすぐに布団に入った。
暑さにやられて寝込む、この感覚。
わたしは、ある夏の夜のことを思い出していた。

わたしはあの日、たしかに中国の雲南省にいた。
麗江という町からさらに奥に行くと、虎跳峡というところがあった。
町から出て虎跳峡を歩き次の町にたどり着く。
中間地点にぽつんと一軒宿が在り、そこに泊まる。二日間の山歩き。
そんなところだった。

快晴で乾いた空気に太陽が照りつける中、
歩き始めたわたしは、昼ごろどうも調子が悪くなり、
途中に出くわした小さい村の木陰に倒れこみ、
水を飲んだのであったが、しかしすぐに飲んだ水を吐いてしまったのであった。
何も受け付けない、これが脱水症状か、
と思いながらしばらく木陰で寝てしまっていた。
中間地点にあるという宿にはとても辿り着けそうにはない・・・こりゃ野宿か・・・。

そのうちに少し回復してきたわたしは、
とにかくなんでもいいから冷たいものを飲もうと思い、
ひなびた村に売店がないかさがした。
すると板にはげたペンキで
「YOUTH HOSTEL」と書いてあるのを見つけたのである。
行ってみると、ただの小百姓の家であった。
しかし行き倒れの者にはありがたかった。
結局、百年前にタイムスリップしたようなその家に泊めてもらった。
夕暮れの中、御飯と馬鈴薯の煮っ転がしを食べながら、
ねぐらに帰っていく鳥たちを眺めていた。
機械の音が聞こえて来ない、静かなひなびた夕暮れだった。
藁が積んである小屋を、階段を軋ませながら上がると、簡素なベッドがあった。
いかにも蚤や南京虫が居そうだと思ったが、ぎらぎらに輝く星を見ているうちに、
眠たくなって、あっという間に朝になった。
虫に刺されることはなく、身体はすっかり回復していた。

いかにも素朴で善良そうな小百姓夫婦に御礼を言い別れを告げ、
歩き出したわたしはその日は無事に中間地点にある宿に泊まった。
西洋人が占拠するなか、上海から来ていた青年と夜に涼みながら話した。
西洋人達はポータブルプレーヤーで音楽を聴いたりしている。
こちらでは日本と同じように、夜の闇の中で虫たちが鳴いていた。
わたしは言った。
「日本人は自然に鳴く虫の声が好きなんだ。」
中国人の青年も言った。
「中国人も虫の声を聞くのが好きなんだよ。」


by沢木ラモ太郎









同じカテゴリー(ヒナビズム)の記事画像
ホダ・ハフェズ
三月の水
ヘン!
答えは引き算にあり。
「港のヨーコ」
「アカバは今日も晴れだった」
同じカテゴリー(ヒナビズム)の記事
 お元気ですか。 (2017-03-11 23:13)
 今日はいつもどうり (2017-01-11 22:24)
 あと何日かで今年も終わるから、 (2016-12-27 21:51)
 ながされて。 (2016-09-27 22:19)
 ちくわといた夏 (2016-09-07 22:26)
 ホダ・ハフェズ (2016-07-05 22:21)

Posted by ひなびや at 23:45
Comments(0)ヒナビズム
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。