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ひなびや
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固定種、自家採種の野菜の販売をしています。
京都の農業法人に5年勤め(夫)、2010年より新城にて夫婦ふたりの自営農業を始めました。
在来種や日本各地の伝統野菜を含めた固定種を、できるだけ自家採種をし、農薬、化成肥料は使わず、少量多品目でいろいろ作っています。
有機肥料を含めた肥料分にもあまり頼らず、ゆっくり時間をかけて栽培しています。
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2015年09月06日

「港のヨーコ」

『畑の八百八町』 5

「港のヨーコ」   作・糸車 羅藻太郎

野菜の直売所に着くと
いつものおじいさんが
琵琶湖の大ナマズのような
巨大なズッキーニを
孫の女の子と一緒に
軽トラの荷台から降ろしているところだった。

引越しのときに
たんすや冷蔵庫を運ぶような難儀さで、
ズッキーニって、
こんなにでかくなるんだ、
と驚愕するほどの大きさであった。

おじいさんは「100」円の値札をつけた。
さすがに買う人はいないだろう。
だいいち、
乗用車では運べない。
「港のヨーコ」




国会議事堂の前をデモが占拠する写真を見た。
カリスマの音楽家が何か言葉を発する。
かつて東京の友人が自然食品や有機野菜の宅配をしていたときに
ずぅっと昔
この人のところにも届けてたよ、
と言っていたのを思い出した。
そういう心のある人なんだと思いながら、
僕は記事を読んでいた。
「港のヨーコ」


夕方、
野菜の直売所の閉店後に行くと、
僕のコリンキーと
おじいさんの巨大なズッキーニだけが売れ残っていた。

「よかったらこのコリンキー、食べてみます?」
とおじいさんに言おうとしたが、
「じゃあこのズッキーニと交換しよう」
と笑顔で言われたらちょっと困るな、
と思って
僕は黙っていた。

おじいさんの軽トラのラジオから
懐かしい歌謡曲が流れている。
「港のヨーコ・ヨーコハマ・ヨコ・・・・・」


そうそう、
巨大なものっていえば、
あれがいくつもこの国に集まってきて、
とか言ってたなぁ・・・。
それが今月末だっけ・・・。
デモで反対と叫んでいたあの法案は
その前の今月なかばに成立?

田んぼの稲は無事に出穂したというのに
いったい人の世は
どんな秋になるのだろう。
「港のヨーコ」


おじいさんと孫の女の子が
ズッキーニを軽トラに乗せるのが大変そうなので、
僕も手伝った。
このどうしようもないズッキーニ、
帰ってからどうするんだろう、
と思っていると
女の子が言った。

「おじいちゃん、
 売れなくてよかったね、
 この中にたくさん、
 種ができてるよ。」

僕は女の子の顔を見た。
秋を感じる夕暮れの光線。

そうだ、
おじいさん、

かわいいお孫さんが喜ぶように

ずっと種をとってよ。


孫の孫


いや



孫の孫の孫まで




喜ぶように・・・、ね。
「港のヨーコ」


















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Posted by ひなびや at 21:55
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