プロフィール
ひなびや
ひなびや
固定種、自家採種の野菜の販売をしています。
京都の農業法人に5年勤め(夫)、2010年より新城にて夫婦ふたりの自営農業を始めました。
在来種や日本各地の伝統野菜を含めた固定種を、できるだけ自家採種をし、農薬、化成肥料は使わず、少量多品目でいろいろ作っています。
有機肥料を含めた肥料分にもあまり頼らず、ゆっくり時間をかけて栽培しています。
Eメール:info@hinabiya.com
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2015年01月17日

『失業レストラン』

港町の商店街で、
どこか落ち着ける喫茶店を探した。
わたしはこの街が好きだ。
それにこの街の人で未だ嫌な人に会ったことがない。

うらぶれた外観とはうらはらに、
その店の中はこざっぱりしていた。
「いらっしゃい」
マスターはわたしを見ると、
眉を八の字にして微笑んだ。

「何をやっても儲かりませんよ。」
わたしが言うと、
いやぁ、まだましでしょう、ウチなんかチェーン店のコーヒーショップに、近頃はコンビニの百円コーヒーが大ヒットですよ、たまったもんじゃあありませんよ。
マスターは続けて、
「そりゃあもう自分の食いぶちは必死に探しましたよ。」
そういうと眉を八の字にして微笑んだ。

入り口のドアが開き、中年の男性が入ってきた。
商店街にある小さな本屋の主人らしい。
「どうです?」
マスターが言うと、
「さっぱりですよ。今じゃあ本なんかわざわざ店に買いに行く時代じゃない。ネットで買って終わりですよ。私も終わりだ。」
男性は答えた。
マスターは、「毎日、今日が人生最後の日かもしれない、と考えるとすれば、いつか必ずその考えが正しい日が来る。スティーブジョブズ」
と言うと眉を八の字にして男性に微笑んだ。
「まぁそんな事言っても、所詮わたしなんぞは、しがない喫茶店のうらぶれた店主ですよ。」
さらにもう一度眉を八の字にして微笑んだ。

今度は小柄な女性が入ってきた。
商店街にある服屋のオーナーらしい。
「どうです?」
マスターが言うと、
「ダメです、どう頑張ってもユニクロにはかないっこありません。あの値段では最初から相手にならない。もう終わりです。」
女性は答えた。
マスターは、「ウサギはカメに勝つ事だけを考えていたから負けた。カメはウサギに勝つ事ではなく、ゴールと言う目標を見ていたから勝った。松岡修造」
と言って眉を八の字にして微笑んだ。

いつしかマスターの微笑みに ホロッ としてしまう自分がいた。
「まぁそんな事言っても、所詮わたしなんぞは、しがない喫茶店のうらぶれた店主ですよ。」
マスターがそう言い眉を八の字にして微笑むと、
三人ともおしぼりで目尻を拭った。
マスター、ありがとう、わたしはコーヒー代をマスターに手渡し、
本屋さんと服屋さんと握手をして、
店を出て
中華街へと
歩いていった。













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Posted by ひなびや at 23:19
Comments(2)ヒナビズム
この記事へのコメント
マスター、ありがとう。
Posted by うめころん at 2015年01月18日 00:12
うめころんさん、ありがとう。
Posted by ひなびやひなびや at 2015年01月18日 18:08
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