ひなび舎だより　～たねとり農家のひなびた暮らし

わたしは豆腐や揚げなどが好物である。
といっても、
ここ十年、３０を過ぎてからそう思うようになった。

それまでは、
たいして美味いとも不味いとも思ってなかった。

子どもの頃に
クリスタルキングの『大都会』が大ヒットし、
夜の歌番組で司会者が
声の高い、痩せたアフロヘアーの人に
好きな食べ物は？と質問すると、
「豆腐が大好きで、豆腐ばっかり食ってます。」
と、答えていた。

横で、サングラスをかけた声の低い方の人が、
無言で、
頷いていた。

いたいけな子供のわたしは、
豆腐をたくさん食べるとああいう声になるのか・・・
と、思ったが
特に努めて豆腐を食べようとも思わなかった。

むしろ
豆腐を食べ過ぎると「一発屋」で終わってしまうのか・・・
という刷り込みが、
いたいけなわたしに危うくされそうになったが、
『北斗の拳』の大ヒットでそれは回避された。


しかし今では豆腐は大好物である。
ちょっとだけ豆腐選びの値段帯を上げると、
美味しい豆腐というのは結構あるものであった。

旅行へ行ってもその地の豆腐は楽しみである。
沖縄や高知のずっしり重い木綿豆腐も好きだし、
京都の甘くて濃い、よせ豆腐も好きである。
パッケージの派手な、あの豆腐はさすが、うまい。

豆腐は木綿豆腐が食べたくなったり、
きぬごし豆腐が食べたくなったり、
いろいろあるけど

「うす揚げ」だけは中のしっとりとした「京揚げ」がいいなぁ･･･、
と京都を離れるときに思っていた。
しかし、袋に自転車に乗った豆腐屋さんの絵の描かれた
おいしい薄揚げを見つけたわたしは
その心配をあっけなく
回避したのであった。