2015年07月20日
『畑の八百八町』3
第3話 「取り残される男」
作:糸車 羅藻太郎
カウンターの席に着くなり
男は言った。
「おやじ、ラーメン。
いつものアレをビンビンに入れてくれ。」
ラーメン屋のおやじは、
いつもの哀しそうな顔でラーメンを作った。
運ばれてきたラーメンをすすると、
男は激高した。
「おい、おやじ、なんだこれ、味がしねぇじゃねえか!」
「お客さん、いつものアレはもうやめたんです。
これからは自然の、天然のだしでやっていきます。」
「そんなんで商売やっていけると思ってんのか?」
「いいんです、わたしは、それで。」
家に戻ると、
奥さんに言う。
「先に風呂だ!」
「あなた、安保法案が・・・」
「そんなことより、今日のプロ野球はどうなんだ?」
「あなた、いまだにそんなこと言ってるの?」
「首位はどこになったと聞いてるんだ!」
「あなた、いまだにそんなこと言ってるの?」
「ホームランのトップは誰だと聞いてるんだ!」
「あなた、いまだにそんなこと言ってるの?」
「コマネチ!!」
「あなた、いまだにそんなこと言ってるの?」
「マッチといえば近藤真彦、ではトシちゃんといえば?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・田原俊彦。」
「ブ、ブー。正解は、敏いとう、でした。」
「あなた、いまだにそんなこと言ってるの?馬鹿じゃないの?
呆れてモノも言えないわ、
そんなことより、
この国の平和が揺らぎ始めてることに、
なんとも思ってないの?」
「平和?
おまえこそ馬鹿じゃないのか?
すぐに戦争なんか
おきるわけ
ないじゃねえか。」
「あなた、
なにを根拠に
そんなこと言ってるの?」
根拠、だと?
当たり前じゃねえか、
そりゃあ、
おまえ、
「テレビがそう言ってただろう?」
作:糸車 羅藻太郎
カウンターの席に着くなり
男は言った。
「おやじ、ラーメン。
いつものアレをビンビンに入れてくれ。」
ラーメン屋のおやじは、
いつもの哀しそうな顔でラーメンを作った。
運ばれてきたラーメンをすすると、
男は激高した。
「おい、おやじ、なんだこれ、味がしねぇじゃねえか!」
「お客さん、いつものアレはもうやめたんです。
これからは自然の、天然のだしでやっていきます。」
「そんなんで商売やっていけると思ってんのか?」
「いいんです、わたしは、それで。」
家に戻ると、
奥さんに言う。
「先に風呂だ!」
「あなた、安保法案が・・・」
「そんなことより、今日のプロ野球はどうなんだ?」
「あなた、いまだにそんなこと言ってるの?」
「首位はどこになったと聞いてるんだ!」
「あなた、いまだにそんなこと言ってるの?」
「ホームランのトップは誰だと聞いてるんだ!」
「あなた、いまだにそんなこと言ってるの?」
「コマネチ!!」
「あなた、いまだにそんなこと言ってるの?」
「マッチといえば近藤真彦、ではトシちゃんといえば?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・田原俊彦。」
「ブ、ブー。正解は、敏いとう、でした。」
「あなた、いまだにそんなこと言ってるの?馬鹿じゃないの?
呆れてモノも言えないわ、
そんなことより、
この国の平和が揺らぎ始めてることに、
なんとも思ってないの?」
「平和?
おまえこそ馬鹿じゃないのか?
すぐに戦争なんか
おきるわけ
ないじゃねえか。」
「あなた、
なにを根拠に
そんなこと言ってるの?」
根拠、だと?
当たり前じゃねえか、
そりゃあ、
おまえ、
「テレビがそう言ってただろう?」